10月をこの地区では祭月(まつりづき)と呼びます。10月1日、いよいよ待ちに待った祭月の到来です。
年番(練り番)の地区の人々によって修復された神輿が松原八幡神社の拝殿に据えられます。宮本である東山地区を始め、各地区の人々によって神輿奉据際(みこしほうきょさい)の準備がおこなわれ、厳粛に神事が執り行われます。松原八幡神社には練り子の安全を祈願し、お参りする人々やお守りを買い求めに来る人々が後を絶ちません。
各地区には日参(にっさん)と呼ばれる鳥居が立てられ、年番(練り番)と呼ばれる7年に1度回ってくる神輿練りの当番を務める地区では3本の神輿幟が立てられ、祭りが近づいていることを知らせてくれます。
各地区の屋台蔵では祭り当日に向けて、太鼓や獅子舞の練習ならびに屋台の金物や衣装の飾り付けがおこなわれ、祭りに向けての準備がすすめられていきます。各地区では、屋台練りの練習などで実際に屋台を練り上げている姿を見ることができることもあります。
それぞれの家庭の朝風呂からこの祭りは始まります。灘の地区の人々はこの祭りのために1年を過ごしてきていると言っても過言ではありません。
昨年の祭りが終わってから、この祭りに向けて準備を進め、正月よりも祭り、盆よりも祭りというように祭りが大事に考えられています。朝風呂につかり、心身の疲れや汚れを落とし、身を清めます。その後、各家でふるまい酒や祭り料理を味わい、祭り装束に身を固め、出立ちの準備をおこないます。
各地区では朝の9時ごろから屋台の蔵出しをおこない練り出しがおこなわれ。途中屋台を練り上げながら各地区を一巡していきます。大幟が先頭、東山・松原・妻鹿と獅子舞を演じる地区では獅子檀尻が続き、その後に屋台、練り子が一団となって松原八幡神社を目指す。その道中顔をあわせた屋台どうしが仲良く練り競うこともあります。
待ちに待った1年、この日のために1年間準備をしてきた。いよいよ松原八幡神社への宮入りの時であります。
東山を先頭に木場・松原・八家・妻鹿・宇佐崎・中村の順に宮入がおこなわれます。各村の名前が書かれた大幟を押し立てて、獅子壇尻がある地区では獅子壇尻を子供が引き、獅子が舞いながら屋台を先導する、そして練り子が練り上げる屋台。その一団が一気に楼門前へと押し寄せてきます。「ヨーイヤサーヨーイヤサー」の掛け声も勇ましく、神様に少しでも近づけようと屋台を高々と差し上げます。
楼門前では1年ぶりに顔を会わせる屋台が仲良く練り競いあったり、桟敷席の前を練り上げ、観客の拍手を多数浴びる姿などが見受けられます。露盤・擬宝珠を外した屋台が楼門を重そうに引きずりくぐり抜け、再び練り上げ拝殿前へと移動していく。拝殿前では宮司のお祓いを受けて、境内の周りを一周してそれぞれの所定の場所に据えられます。
旧7カ村すべての屋台の宮入が終わるのは午後2時ぐらいになります。また、境内西側のステージでは松原・妻鹿それぞれの獅子が奉納舞を披露する姿も見られます。
すべての屋台が宮入を終えると、屋台が再び練り上げられ宮出し(宮戻し)・練り合わせが行われます。
拝殿前、楼門前、それぞれの場所で練り合わせが行われる。屋台同士が激しく・荒々しく合わせられる。屋台が右往左往し、右に左に揺れる。時には3台4台練り合わせられる、その度に観客から大きな拍手が起こります。
日が暮れ、楼門の提灯に灯がともると、東山・八家・宇佐崎の3台の屋台にも電飾が灯り、宵宮の最後に華が添えられます。神輿の練り番を務める地区の屋台は屋台練りが今日だけとあって、屋台練りにも一層力が入ります。まだまだ練り子の屋台を練りたい気持ちはあるが、明日もあるからとそれぞれの屋台が各地区の屋台蔵へと帰路に着いていきます。